ギター・ウクレレ教室 Talking

奈良県桜井市の音楽教室

 

コラム

現在Talkingまたは他教室に通われている生徒さんや、音楽教室に興味をお持ちの皆さんに向けて、自分がこれまでの講師生活において、経験したことや感じたこと、楽器指導に対する考え方など、どうでもいい話から少し固い話までざっくばらんに自分の思考を書いています。


音楽の「楽しさ」

「音楽の楽しさをお伝えします」、「楽しく上達できます」、「楽しいレッスンを心がけています」。

こういうの、音楽教室のホームページや広告でよく見かけますよね。

私の教室に初めて来られた生徒さんも、「楽器が弾けたら楽しそうだったので」「生活に何か楽しめる時間を作りたかったので」、よくそう言われます。

確かに音楽は楽しいものですが、この「楽しい」という言葉を誤って解釈されていること多いみたいです。

そもそも「楽しい」という言葉には、性質の違った二通りの意味があるんじゃないでしょうか。

ひとつは「お金で買える楽しさ」です。

例えば、遊園地やゲームセンターのような娯楽施設は、楽しい時間を与えてくれるところです。一歩足を踏み入れれば、楽しいと思わせてくれるように作られていますから、お金を払えば誰でも簡単に楽しい時間を過ごすことができます。楽しい時間をお金で買うわけですから、簡単でお手軽です。

もうひとつの楽しさは「自らの努力で得られる楽しさ」です。

これは学校で何か新しいことを学んだり、練習して技術を修得していく楽しさです。

勉強することや努力することは退屈で憂鬱なことだと思われがちですが、果たしてそうでしょうか。解らないことが解るようになる、自分に出来ないことが出来るようになるということは、本来とても楽しいことではないでしょうか。

では音楽の楽しさ、音楽教室で得られる楽しさってどっちの楽しさでしょうか。
(これがわからない人は、あまり楽器には向かない人かもしれません。)

答えは後者の方です。

楽器は練習を重ねることで少しずつ演奏が上達し、自分の成長を感じさせてくれるところに楽しさがあるのです。
初めてすぐに上手く弾けるものではありませんし、楽しいと思えるまでに時間がかかり、努力が要ります。

実はこのことが解っていない人、意外に多いのです。

音楽教室のレッスンというのは遊びに来るところではなく、音楽を学ぶところです。

他の教室がどのような目的で運営されているか知りませんが、少なくとも私の教室は楽器の技術や知識を学ぶための教室です。(あまり上達意欲のない生徒さんには、その人の希望に合わせたレッスンにしています)

私の教室には、これまでにギターやウクレレを始めたいという方が大勢来られていますが、真剣に学ぼうとしている人から、はまるで友だちの家に遊びに行くような感覚で来ている人まで様々です。

音楽教室の広告で見かける「音楽は楽しい」というこの言葉の意味は、「勉強を続けることで、少しずつ音楽の楽しさが解ってきます」という意味で、「お金と引き換えに楽しい時間を提供します」という意味ではないのです。

音楽教室というのは、入会金とレッスン料を払いさえすれば手軽に楽しい時間を過ごすことが出来る場所というわけではないので、ご注意下さい。

楽しいと思えるかどうかは自分の努力次第です。

「楽しく楽器を弾きたい」「楽しみながら練習したい」とよく生徒さんたちは口にしますが、音楽を楽しむということは決して簡単なことではないと思います。

私は今まで20年近くギターを弾いていますが、心から楽しんで演奏出来たことなんて数えるほどしかありません。いつも悔しさと自分の未熟さを痛感させられて、反省させられてばかりです。

でもその悔しさから次の目標が見つかります。
自分の課題を見つけて練習し、少しでも進歩出来た時に楽しさを感じます。

課題を見つけては練習し、練習してはまた次の課題を見つけます。

こうして課題探しと練習を繰り返すことで少しずつ上達して行くわけですが、このプロセスを楽しいと思える人が楽器にのめり込みます。

音楽が私たちの生活を楽しいものにしてくれることは確かですが、楽器は上達してこそ楽しいもので、楽しいと思うようになるまでに時間がかかります。

今日から練習を始めて明日には上達しているなんてことはなく、今日練習したことが成果として表れるのは数ヶ月、数年先のことです。

数年後に上手くなっている、数年後に音楽を楽しむために今日練習するのです。

つまり楽器の練習とは、将来のための投資ということになりますね。

西沢恭輔の写真

西沢恭輔