ギター・ウクレレ教室 Talking

奈良県桜井市のギター教室

 

コラム

現在Talkingまたは他教室に通われている生徒さんや、音楽教室に興味をお持ちの皆さんに向けて、自分がこれまでの講師生活において、経験したことや感じたこと、楽器指導に対する考え方など、どうでもいい話から少し固い話までざっくばらんに自分の思考を書いています。


ブランクがあっても戻せるのか

「ギター(ウクレレ)を続けていた人が、長期にわたってブランクができてしまった場合、ギター(ウクレレ)の技術は戻せるのか?」という質問を時々受けるので、今回はそのお話です。

ずっと練習を続けている間は、ギター(ウクレレ)の技術はどんどん上達します。
ですが、ひとたび練習をやらなくなると、あっという間に技術は衰えます。

受け入れ難いですが、それが現実です。

数日弾いていないだけで技術が全てなくなるということはないですが、数週間とか数ヶ月、あるいは1年以上、ブランクが長くなればそれだけ技術は衰えていくので、もとの状態に戻すのに時間がかかるはずです。

もし弾かない日が長く続いたら、どのくらい技術が衰えていくのか、そして衰えた技術を今の状態に戻すのにどのくらいかかるのか、長く楽器を続けている人なら誰でも一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

私は現在ギター歴が25年になりますが、幸い病気や怪我で長期間ギターが弾けないということはなかったので、今までに大きなブランクはありません。

最も長く弾かない日が続いた場合でも、5日くらいでしょうか。
6日以上空けたことはなかったように記憶しています。

なぜ5日も弾かない日があったか?

なんとなく弾く気になれない時ってあるんですよね。

目標を見失ってしまったり、心に迷いが生まれたり、長くギターを弾いてればモチベーションが下がることなんてよくあります。

ですが何日か弾かない日が続くと、腕が鈍るのが怖くて、モチベーションが下がっていても「とりあえず少しは弾いておこう」というのが今までの私です。

なので、長くブランクが空くとどうなるかということを、自分自身の体験からは話すことができないのですが、他人から聞いた体験談などを基にお話したいと思います。

これは極論になりますが、どんなに長いブランクがあっても技術を戻すことはできるはずです。

一度身につけた技術なので、もし完全に失っても、もう一度同じ練習をすれば再び身につけることはできるはずなので当然ですよね。

謎なのは、どのくらいのレベルの人がどのくらいブランクを空けると、どのくらいの時間で元の状態に戻せるのかということだと思います。

ある人がYouTubeの動画の中でとても興味深い話をされていて、とても共感できる内容だったので、その人(仮名Aさん)の話を紹介します。

Aさんは学生時代に独学でベースをやっていて、仲間と一緒にバンドをやっていたそうです。

ベースの教則本を読みながら、試行錯誤しながら何とかベースを練習していたそうなのですが、ある時独学に限界を感じて、とある音楽教室に入学したそうです。

するとそこの先生はプロのベーシストとして活躍されている人で、ラッキーなことに、プロの目線から考えた練習法をみっちり伝授してもらえる機会に恵まれたそうです。(ラッキーかどうかは受け手によるでしょう)

その先生の指導というのは、とにかく「徹底的に基礎を身につける」というものだったそうです。

どの教則本にも載っているような簡単なフレーズを、何度も何度も繰り返し、無意識に指が動くようになるまで繰り返して、身体に覚えさせる練習をさせるそうです。

Aさんが独学で練習していた時は、教則本に従ってフレーズを何回か弾いてみて、"なんとなく弾けたら次に行く"というやり方をしたいたそうなのですが、プロの先生に習うようになって、練習の質が全く変わったそうです。

Aさんはプロの視点と素人の視点とでは、全然違うものだということに気づき、とても驚いたそうです。

その後、社会人になったAさんは音楽とは無関係の職業に就き、数十年経った今でも趣味でベースを弾いているそうなのですが、仕事などの関係で長期間ベースを弾かない日が続くこともしばしばあるそうです。

やはり長期間のブランクが空くと技術はたちまち衰えてしまうそうなのですが、練習を始めると不思議なことに、ほんの数日で元の状態(ブランクの前の状態)に戻せるそうです。

仮に1年のブランクがあった場合でも、まるで3日しかブランクがなかったのかと思うくらいに、直ぐに感覚がよみがえってくるそうです。

「身体が覚えている」ということでしょう。

それはプロの先生の指導に従って、基礎を徹底して身につけたことからなるものだろうと、Aさんは言っていました。

私は長くブランクを空けた経験がないですが、分かる気がします。

教則本を見て、なんとなく弾けたら次に進むようなやり方では、技術が身体に染み付くことはないし、ブランクが空いても直ぐに元に戻すことなんて、きっとできないと思います。

技術を身体に覚えさせるには、それなりの時間がかかります。

小さな小石を積み上げて、大きな山を作るような作業ですから、根気のない人にはできないことです。

Aさんのお話しの中で、私が最も印象に残ったのは、
「基礎を確実に身体に覚えさせるのには時間がかかるが、一度身に付けてしまえばそれは無くならない。そのおかげで一生音楽を楽しむことができる。」という所です。

付け焼き刃で覚えた技術は、一度やらなくなると直ぐになくなってしまうが、時間をかけて基礎を身体に覚えさせてしまえば、一生なくならないんですね。

本当にそうなんですよ、技術って。

美容師とか、左官屋とか、職人さんとか、技術をつけて仕事をしている人なら解るんじゃないですかね。

ということで、私が感じている結論をいいます。

時間をかけて基礎を確実に身に付けた人は、感覚を戻すのに少しの時間は要しますが、しばらくすれば直ぐに戻ります。

反対に基礎が身体に身についていない人はどうかというと、おそらくそれまでの練習量によるでしょう。

練習の積み重ねができていない人は、ブランクができるとそれで終わりです。何も残りません。

知識だけは記憶に残りますが、技術は残らないんです。

というか、基礎が身についていない(身につけようとしない)生徒さんが一旦レッスンを受けなくなった場合、しばらく経ってからもう一度レッスンを再開されることなんてほとんどないので、測定不可能ですね。

西沢恭輔の写真

西沢恭輔